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変わる包材、変わる価値観見えない時代の「見せ方」 〜パッケージデザインの現在地〜

  • 執筆者の写真: 山根製菓
    山根製菓
  • 6月10日
  • 読了時間: 3分


包材とデザインの現在地 〜テクノロジーとコストの間で〜

近年、食品業界における包材の進化は目覚ましいものがあります。機能性、環境対応、デザイン性、それぞれが多様化・高度化しており、選択肢は確かに広がっています。

しかし、私たち米菓子製造業にとっては「防湿性」が生命線です。いかに湿気をシャットアウトできるかが、品質維持と顧客満足のカギを握ります。

にもかかわらず、防湿性とコストのバランスは常に悩ましい課題です。高性能な包材は確かに魅力的ですが、それに見合う価格で提供できるかという現実があります。加えて、環境対応の観点からは脱プラ・再生可能素材への移行も求められ、技術的にも倫理的にも判断が難しい局面が続いています。

こうした中、私たちは常に「何を守るための選択か?」を問い直しながら、一つ一つの包材を決めています。

パッケージデザインと時代の変化

営業に行くと、よく言われる言葉があります。

「中が見えないと売れないんじゃない?」

かつては確かに、透明な窓付きパッケージは“安心”や“信頼”を象徴する存在でした。中身が見える=安心、誠実、という時代背景があったのだと思います。

しかし、今は時代が変わりつつあります。スマートフォン一つあれば、商品の中身も製造者の顔も、レビューもすぐに調べられる。QRコードをパッケージに付けるだけで、動画や詳細情報へとすぐにアクセスできます。

デザインの役割も、「見せる」から「伝える」へとシフトしてきています。ブランドの世界観や商品の物語性をどう表現するかが、現代のパッケージに求められる価値になってきました。

ただし、これは私たちが伝える努力を怠って良いということではありません。「見せなくても伝わる」ためには、むしろ今まで以上の工夫が必要になります。視覚的インパクト、コピーライティング、ストーリーテリング、すべてを含めて“デザイン”なのだと実感しています。


そして、よくコンサルタントの方々から「パッケージデザインが大切ですよ」といったご提案をいただくことがあります。中には「信頼できるデザイナーをご紹介しますよ」と申し出てくださる方もいます。

もちろん、デザインの力を否定するつもりはありませんし、素晴らしいデザイナーの仕事には心から敬意を抱いています。ただ、正直なところ、これまであまり知られていないデザイナーの方にお願いして、大きな成果につながったという経験は多くありません。


私たちが感じているのは、「誰がつくるか」よりも「どんな文脈で、何を伝えたいか」が明確であることの方が大切だということです。そして今は、生成AIなどのツールでも、アイデアをかたちにする上で十分な補助をしてくれる時代になっています。目的や価値がきちんと定まっていれば、それを補完する手段は必ず見つかる。そんな感覚で、私たちはデザインとも付き合っていきたいと考えています。


包材も、デザインも、時代とともに進化しています。そして私たち自身もまた、日々の現場で「なにを選び、なにを伝えるか」と向き合い続けています。コストと機能性、伝える力と世界観、正解のない問いのなかで、迷いながら、工夫しながら、それでも少しずつ、前へ進んでいきたい。

変わることを恐れず、守るべき価値を見失わずに。

これからも、私たちのものづくりが、お客様の日常にそっと寄り添える存在であり続けられるよう、試行錯誤を重ねていきます。



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